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α-オキシムエステルを用いた極性転換反応
非天然アミノ酸やそれらの誘導体の合成は生化学、薬学分野において重要であり、生体内でのラセミ化に対する安定性や、立体配座の柔軟性の制限などから注目されている。特に後者の性質はより重要であり、例えば、化学的・酵素的分解を受けにくくするたんぱく質の二次構造を有するものも可能となる。さらに、抗不整脈薬として効果のある化合物1や慢性閉塞性肺疾患に効果を示すとともに唾液の分泌が過剰に起こってしまう病気である流涎(りゅうぜん)症にも高い活性値を示すAZD9164として知られる2を始めとする多くの生理活性物質の基本骨格となっている。このため、アミノ酸の窒素原子上に様々な置換基を自在に導入できる反応の開発はきわめて重要といえる。
当研究テーマでは、α-イミノエステルとオキシムの両方の性質を有するα-オキシムエステルの合成、およびα-オキシムエステルに対する有機金属反応剤を作用させることでのN上での求核置換反応と求核付加反応が連続的に進行するN,N-ジアルキル化反応の開発を行っており、これまでに、様々なα-アミノ酸誘導体を得られることを見出している。 オキシム酸素上にトシル基(Ts)を有するα-スルホキシイミノエステルに対してGrignard反応剤を作用させることで、同じ置換基を窒素原子上へ導入することができ、様々なN,N-二置換-α-アミノ酸誘導体が良好な収率で得られることを見出している。また、二種の求核剤を用いることで窒素原子上がそれぞれ異なるジアルキル化体が得られることも見出している。
また、N,N-ジアルキル化反応によって得られたエノラートに対して酸化剤を加えることでイミニウム塩を形成させ、さらに求核剤を加えることでC-アルキル化反応を起こし、四級炭素を有するN,N,C-トリアルキル化体を得ることにも成功している。