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Research Overviewon Current Research of the Mizota Group

 医薬品から農薬、染料、化粧品、液晶まで、私達の暮らしを多様な領域で支えるファインケミカルズ。現代の生活はこれら多くのファインケミカルズを基盤とする有機化合物の上に成り立っています。私達の研究グループでは、人に優しいファインケミカルズの次代を見つめ、有機化学では難度の高いとされる様々な反応の開発や、環境に優しくかつシンプルな反応を活用した新薬、新規生物活性物質や新規機能性材料の開発に取り組んでいます。

 医薬や農薬を合成する際、目的の化合物の立体化学を制御しつつ分子を構築することは必要不可欠であり、また、液晶などの機能性物質を合成する際も、特定の異性体のみを選択的に合成していく必要があります。 私たちは様々な有機反応を駆使することでこれらの合成、すなわち「有機ものづくり」を行っています。

 今後より一層人に優しいファインケミカルズの発展を促すために、私たちはイミン化合物を中心とする革新的合成法および多段階合成法の開発を行っています。以下にこれまでの主な成果を紹介します。



α-ヒドラゾノエステルの極性転換反応を活用する高選択的α-アミノアミド合成法の開発


 ヒドラゾンは,Wolff-Kishner還元反応,Shapiro反応,Bamford-Stevens反応など,有機化学において汎用性の高い合成中間体であり、 C=N部位は中程度の反応性を有する求電子剤として振る舞うため、キラルヒドラゾン導入による不斉反応への利用も期待できます。
 本研究では、新たにα-ヒドラゾノエステルを合成、極性転換反応を検討し、ジアルキルアミノ基の転位による分子内アミド化を伴った α-N,N-ジアルキルアミノアミドがワンポットで且つ高収率で合成できることを見出しました。また、本反応を活用し、グリシン1型トランスポーター 阻害剤を合成することにも成功しました。






γ-ヒドラゾノ β-ケトエステルの極性転換を活用するテトラミン酸誘導体合成法の開発


 テトラミン酸構造(ピロリジン-2,4-ジオン)を有する化合物は、多くの陸上および海洋生物から単離される細菌や真菌由来の代謝産物であり、 抗菌薬、抗腫瘍薬等の化合物に組み込まれていることが知られています。これまでにテトラミン酸骨格の合成法がいくつか開発されていますが、 未だ適応範囲や反応条件等の制限もあり、テトラミン酸誘導体の合成法の開発は強く求められています。
 本研究では、γ-ヒドラゾノβ-ケトエステルを出発物に用いることで、タンデムN-アルキル化/還元/環化反応がワンポットで一挙に進行し、 テトラミン酸誘導体が得られることを見出しました。本反応では、系内で生成されたヒドリドによる還元とそれに続く環化反応であり、 種々の基質や求核試薬にも適用できる極めて有用な反応です。また、本反応を鍵反応としてHDAC阻害活剤の全合成にも成功しました。






N-シリルα-イミノエステルの極性転換反応とシリコンの特性を活用したタンデム反応の開発


 含窒素化合物の合成法は、イミンに対する求核付加反応が一般的ですが、中でも、アンモニア由来のイミンは、 三量化または加水分解を受け出発物質に戻りやすいため、不安定で取り扱いが困難とされています。そのため、代替イミンとしてメタロイミンが用いられます。メタロイミンの利点として、反応後の加水分解のみで保護基のないNH誘導体に容易に変換できる点が挙げられます。
 本研究では、メタロイミンの特性を極性転換に応用し、新たに合成したN-シリルα-イミノエステルが極性転換反応に有効であることを見出しました。これにより、保護基のないアミノエステルの直接的合成法開発に成功し、またシリコンの特性により系内で転位反応が進行し、 従来とは大きく異なるN,N-ジアルキル化反応が進行することも見出しました。さらに本手法からのピロリジンやピペリジン、イミノジアセテートの効率的合成にも成功し、極性転換を活用したタンデム反応の新境地を切り開きました。






α-イミノチオエステルの極性転換反応に続くアルキルチオ転位を伴う連続的C-C結合形成法の開発


 アミノチオエステルは、ペプチドケトン(酵素阻害剤)やスクチタニン(抗癌剤)などのエナミド合成前駆体です。 特に、β-置換-α-アミノチオエステルは、ペプチド天然産物に見られるβ-置換α-アミノ酸にも変換できるため、 この骨格構築のためにこれまで多くの研究が行われてきました。しかしながら、依然としてより有効な合成方法が必要となっているのが現状です。
 本研究では、α-イミノチオエステルの簡便な合成法を初めて見出し、本基質がきわめて温和かつ短時間で、 極性転換反応であるN-アルキル化が進行する事を見出しました。また、N-アルキル化後にエノンを作用させることで、 タンデムN-アルキル化/Michael付加反応が進行し、アルキルチオ基の転位を伴うβ-アルキルチオ-α-アミノチオエステルを、 高収率および高ジアステレオ選択性で得ることに成功しました。






アルミ電解コンデンサの高機能化へ向けた新規二塩基酸の開発


 コンデンサとは、蓄電器の事であり、静電容量により電荷を蓄えたり放出したりする受動素子です。用途としては 電子回路に抵抗器やコイルと共に用いられ、整流効果を示しフィルタとして用いられています。コンデンサには様々な種類があり、 プラスチックフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、マイカコンデンサ、電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ、 可変コンデンサなどがあります。中でも電解コンデンサの一種であるアルミ電解コンデンサは、私達の身の回りの電気製品に組み込まれており需要度も高いものとなっていますが、現行品では、温度105℃、耐電圧550V、寿命3000時間が性能限界とされています。そのため、高耐電圧、高耐久性、小型化などの性能の更なる向上が求められています。
 本研究では、アルミ電解コンデンサの高機能化へ向けて、従来品よりも優れた溶解性、耐熱性、耐電圧を有し、 短工程で合成可能な新規二塩基酸の開発を行い、史上初の800Vを超える最高耐電圧を有する電解液の開発に成功しました。




[メディアへの展開]

電波新聞(2018.03.28)
中日新聞(2016.09.03)
日刊工業新聞(2016.08.30)
電波新聞(2016.06.29)
電波新聞(2015.10.07)

三重大学Rナビ(2016.01.29)

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